Last Updated on 2018年10月30日 by 大山賢太郎
「夏の知的生産とブログ祭り」: 台風シーズンたけなわの曇り空の下、渋谷で開催された本とライフハック大好き人間が集う超ニッチなセミナーに参加しました。
今回は、その内容を「超本好き」がどう感じ、どう考えたかを書きとどめました。ライフハッカーでなくても超ためになる内容が満載です。いつも思うのですが、ネット上のアバター(今も言うの?)のキャラクター(プロフイール)画像と実際の人物の印象が随分と違うということ。このギャップが楽しくもあり、とても意外でもあります。またこれが、セミナーやオフ会に参加する密かな楽しみだったりします。
今回の記事は、Lifehacking.jpの堀さんが主催して、Tak.さんの新刊の紹介を主な目的で知的生産のツール、プロセス、本質的な考え方をその道のエキスパートたちが語ったセミナーです。
すでにいくつか記事がアップされていますが、まとめのような位置づけでお届けします。
このセミナーのキーワードは、「知的生産」「アウトライナー」そして「断片」です。
最初の2つは開催以前からの「所与」だったのに対して、「断片」については、プレゼンターの隠し玉であり、その場で一気に参加者を惹きつけてどっぷりと知的な誘惑に誘い込んで酔わせる効果がありました。
目次
「夏の知的生産とブログ祭り」 セミナーの内容
今回のセミナーは、1、講師3人によるプレゼン、2、堀氏の司会によるパネルディスカッション、参加者全員によるフリートークの3部構成で進められました。
以下は、Facebookで作ったスライドショーです。(ほんの数分で簡単に作れて、驚きました。)
1、Tak.氏、倉下忠憲氏、堀正岳氏によるプレゼン
・アウトライナーとは(by Tak.)
Tak.さんのスライド
今回は、Tak.氏の新刊「アウトライナー実践入門 ~「書く・考える・生活する」創造的アウトライン・プロセッシングの技術」のプロモーションも兼ねていましたので、まずはTak.氏のプレゼンから始まりました。
本の内容から直球そのもので、「アウトライナーとは」というタイトルです。セミナーの参加者がお3方の読者が中心ということで、アウトライナー自体の未経験者であることを前提にしていたようです。しかし、利用者かどうかの挙手を問われると8割方以上の参加者がすでにお使いのようでした。
そうは言っても、具体的にお話が始まると、やはりその道の権威の説明は、私も含めて、なんとなく利用している者にとって多くの気付きが得られるものでした。
まずは、「アウトライナーとは何で、何ではないか、そしてその誤解とは」という点で、はっきりとツールとしての輪郭が見えてきます。
アウトライナーの3つのシンプルな機能とは、アウトラインを表示、折りたたみ、そして組み替えることができる点です。それ以上でも、それ以下でもない。しかし、このシンプルさ故に非常に強力であるのが、改めて感じさせられるお話が続きます。
それは、アウトラインや全体像を考えてから書くツールではなく、書きながら考えるためのツールである点です。そして、その技術としてトップダウン(構造)とボトムアップ(ディテール)を切り分けることで、簡単に行き来できるという機能も持っています。
この作業をTak.氏は、思考のプロセスとして「シェイク」と呼んでいます。このシェイクとは、ディテールを断片として切り分けて詰めていき、一連のながれと構造に落とし込んでいくものです。
そしてそれは、フレーズの流れ→フローをWrap→文章→段落→見出し→文書→文書の集合というアウトプットにつながります。この流れを通して、始めは「書き手のため」出会った作業が「読み手のため」の作業につながり、プロセスがプロダクトへと進化していく過程でもあります。
このプロセスを行き来できる、行き来するためのツールがアウトライナーなのです。Tak.さんの20年以上にわたる研究と経験に裏打ちされた説得力のある内容でした。
Tak.さんの今回のセミナーに関する記事「夏の知的生産&ブログ祭り」も参考にしてください。
・断片からの想像(by 倉下忠憲)
倉下さんのスライド
倉下忠徳さんは、ライフハックやツールなどの本を数多く出されている方です。特に、「Evernote豆技50選: 倉下忠憲」は今回の内容にも関連するおすすめの1冊です。
倉下さんのプレゼンは、Tak.さんがアウトライナーというツールとその至高のツールとしてのパワーが明確になったところで、その理論を深掘りをするという役割を買ってでました。
彼の視点は、全ては断片であり断片は全体でもあるという点です。つまり、思考は断片から成り立っていて、その価値はそれをどのように取捨選択して組み立てるか、それにより価値が生まれるというものです。
これを倉下さんは「Fragment Trigangle」と呼び、断片の「認識」「組織化」「操作」という3つの機能で可能にする理論を展開しました。
梅棹忠夫氏の「知的生産の技術」では、次のように述べています。
「知的生産というのは、頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら – 情報 – を、人にわかるかたちで提出することなのだ」(梅棹忠夫)
倉本氏は、この「断片」をFragmentという英単語で表現していますが、FragmentはまたFragile(もろい、こわれやすい)とも共通する語源を持っています。つまり、
Fragment Management ≒ 断片管理の技術なのだと断定しています。
そして、
・創発=部分の性質の単純な総和にとどまらない特性が、全体として現れること。そして、
・そこで付されるもの=創造される価値
だと結論づけています。
つまり、「価値を生む力=考える力=想像される価値」だとしています。
さすがご自分を「物書き」と呼ぶ方だけあって、物事をよく考え実践している納得力に裏打ちされています。
蔵下さんご自身の記事「「夏の知的生産とブログ祭り」で使用したスライドをご紹介 #シン・ライフハック祭り」もご覧ください。
・断片から作品を作り出すための「考える道具」たち(by 堀正岳)
堀さんのスライド
最後のプレゼンターは堀さんです。まず最初に、彼はお2人のプレゼンを後ろでご覧になっていて非常に触発されたことを述べられました。そして、聞いているその場でプレゼンの内容を、お2人のテーマに沿った形に書き換えたうえで始められました。
これについては、Twitterでも多くの人が驚きの声を上げていました。私もその一人です。
しかし後からこの記事を書いていて、実は、からくりが見えてような気がしました。堀さんは彼の(北極圏の気象現象を研究する)科学者です。
この彼ののバックグラウンドから「素粒子」という言葉で、思いがけなく同じことを説明しようとしていたものが、お2人によって「断片」と呼ばれていたために、そこを書き換えたのかと勝手に考えています。
しかし、いずれにしてもそれは大したことではありません。その場にいたインスピレーションが次々と伝播していった状況に、本当のところ、みんな驚いていたのだと思います。
堀さんのテーマは、断片(素粒子)を扱うことをプロセスとツールで語るというものです。彼は、それを次の3つの道具とプロセスで説明しています。
- 自分を空にするツール(なにをinputするか)
- 構造を意識してアウトプット(なにをoutputするか)
- 自分を深掘りする(個人のセンス、Secret Source)
登場してきたのは、紙のノート、情報カード、Reader3、Pocket、Evernote、OmniOutliner、Ulysses、Screvenerといった彼自身が使いこなし心酔しているツールが次々と飛び出します。
それは、自分の頭をカラにして、インプットとアウトプットするなかで、結局のところ問われるのは個人のセンスである。そして、より深くより良いアウトプットを引き出すためには、何度も最初のノートに戻って探しに行く。
そしてそれは、科学で言うところの素粒子と素粒子が影響しあってパワーを生み出す。単体では力を持たないが、お互いに影響しあって(相互作用)パワーが生まれる。それを実践していことにほかならないというのです。
正しく、細書のお2人が深掘りしたものを総括し、自然科学の分野でまとめ上げるというライフハッカーならではの内容でした。
折しも、このお3方は全く別のバックグラウンドをお持ちでありながら、思考のプロセスとツールについて「断片」というキーワードでズバリ言い当てているところが圧巻でした。
堀さんのセミナー記事「知的生産とそのアウトプット先としてのブログの個性の作り方について #シン・ライフハック祭り」はこちらです。
2、パネルディスカッション
次に、10分ほどの休憩を挟んで、堀さんの司会によるパネルディスカッションが始まりました。堀さんがテーマを決めて、次々と質問しながらお話を展開していくというものです。
内容的には、「アウトライナーとブログ」や「ブログを書く目的」そして「なぜ、長年にわたってブログを書き続けられるのか」といったものでした。
特に、なぜブログを書くのか、その目的は何かといった内容は、堀さんが振った質問に対する応えが全く噛み合わずにハラハラする場面もありました。
しかし、例えば「ブログのダークサイド」については、読者の存在が一定の歯止めになっているという点では一致していたようでした。
3、参加者全員によるフリートーク
最後に、参加者全員がお茶菓子を片手にお3方を囲んでのフリートークに進みました。ここでは、いつもは中々質問できないような点やブロガーとしての裏話などに花が咲きました。
特に、ブロガーのダークサイドについては、ここにかけない内容が飛び出してきます。(この辺は、参加者の特権ですね。)
おわりに
今回、パソコンやスマホの画面上でしか見えない画像の裏側に、どのような人間像があるのか、ぞのような「人」がそこにいて、何を考え何を悩みながら毎日のブログ記事やプロダクトとしての「本」につながっているのかを垣間見ることができました。
また、著者本人が語る内容は、本で読む内容とは全く違った説得力があることが改めて感じられるものでした。この人と人とが向き合ったつながりと場の空間をご一緒できたこと、その機会に感謝したいと思います。
堀さん、Tak.さん、倉下さん、またそこでお話をさせていただいた皆さん、ありがとうございました。今後も是非、機会を設けてください。出来る限り馳せ参じます。
あなたは、この記事を読んでどのような感想をお持ちですか?あなたにとって、ライフハックや「アウトライナー実践入門」とはどんな存在ですか?
ぜひ、あなたのコメントを下のコメント欄からお知らせください。
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